大きい、あるいは多くの荷物を輸送する時に用いる物流搬送用のパレットは、木製か樹脂(プラスチック)製が一般的です。当社でも大判ロール紙を中心に製図用紙とフィルムを数十ケース単位で入荷・出荷するのに使用しています。
今回は近年見かけるようになった段ボールパレットについて説明していきます。
---目次-------------------
2.歴史と背景
5.おわりに
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1.段ボールパレットとは?
段ボールパレットとは物流運送時に用いられるパレットで紙基材(段ボール基材の応用)を用いた製品となります。最近は環境問題、SDGs、脱プラスチックの影響から話題となったり、見かける機会が増えてきました。
2.歴史と背景
現在の加工技術あってこそと思っていましたが、調べてみると1970年代の後半くらいから紙製パレットは国内で取り扱いされていたようで、現在メインとなっている段ボール基材の応用ではなく、圧縮された紙繊維品がメインだったようです。
ただし当時は強度と耐久性に問題があり幅広い普及には至らず、その後各メーカーで検討と改良が進み、環境問題がクローズアップされると共に注目度が少しずつ高くなってきています。
ここ数年で加工技術が向上し生産能力が上がり、他基材の原材料高騰や為替も影響してか、木製パレットよりも安価な段ボールパレットが販売され始めました。強度と耐久性にこだわらなければこの品質で十分という用途をきっかけに広がり始めているようです。
3.メリットとデメリット
では段ボールパレットのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
メリット
環境負荷の低減:木材と比べてCO2排出量が少ない、リサイクルしやすい 。
軽量化:木製パレットの約1/4の重量で、輸送効率の向上や作業員の負担軽減に貢献。
燻蒸処理不要:国際輸送における燻蒸処理が不要で、コスト削減と環境負荷低減に繋がる。(樹脂パレットと同様)
廃棄の容易さ:使用後は容易に解体・廃棄が可能。
コスト削減:製造コストや輸送コストが木製パレットよりも低くなる場合がある。
静音性:取り扱い時、輸送時の騒音が少ない。
デメリット
強度:他基材と比較して強度が劣り、積載重量に制限があり衝撃に弱い。 (耐荷重2トン以上の製品もあり)
耐水性:水に弱い為、屋外での保管・使用には適していない。
コスト:高強度・高耐久タイプの段ボールパレットは高価となる場合がある。
入手性:他基材と比較して入手に時間がかかる場合がある。
ざっと一般的な例を挙げてみましたが、コストについては安くできるケースもそうでないケースもあり、仕様(品質・強度)次第となります。
比較表
パレット基材 | 環境面 | コスト | 耐水性 | 強度・耐久性 | 燻蒸処理 | パレット重量 | カスタマイズ性 | 廃棄面 |
段ボール | 〇 | 〇△ | △× | △× | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
木材 | △ | 〇 | 〇△ | 〇△ | △× | × | △ | △× |
樹脂(プラスチック) | × | △ | 〇 | 〇 | 〇 | △× | × | △× |
4.当社を取り巻く環境と取り組み
弊社内で段ボールパレットに関する情報を集めてみました。
都内の比較的小さい規模の企業様へ木製や樹脂製のパレットで納品する際に、「受け取り後の処分に困る」という声があるようです。確かに発送側としては、製品の傷みを懸念して少量でもパレットで出荷する場合がありますが、住宅街に位置する企業(受取側)では廃棄や回収が手間となり、場合により費用も発生します。その点段ボールパレットは、エリアによって段ボールと同様に廃棄・回収が可能とのことですので、この部分を考えれば段ボールパレットの導入はメリットがありそうです。
物流側(倉庫・配送業)から言うと、段ボールパレットは必ずしもウエルカムでは無いという情報もありました。パレットは「天下の回りもの」的な扱いで使いまわすことを想定しているため、雨に弱い、強度がなくフォークリフトで破損させてしまうというイメージを持たれている段ボールパレットは、手放しで喜べる製品ではないようです。その点を考慮して、日々耐水性と強度の向上に各メーカーとも取り組んでいます。
強度と耐水性が課題と言っても、現物を一度も見たことが無い方が目にしたら、想像よりはるかにしっかりしているとお感じになると思います。耐荷重で1トンや2トン以上の製品もあり、基材に水が浸透しなければ、急な雨に降られ短時間で溶けてしまうというレベルでもありません。
大きさでなく重さで送料が決まる輸送方法においては、軽量な段ボールパレットには優位性があります。また、特別サイズのパレットを指定された際に、樹脂パレットでは金型代が発生し、数量が少なかったり頻繁にサイズが変わったりするとコストがかかります。その点段ボールパレットは加工が容易なため、検討されるケースが多いようです。
現在当社において段ボールパレットでの出荷は、ご希望のお客様と年間単位での発送数量・輸送条件・積載重量等を考慮して、場合により検証や費用の一部負担をお願いしながら検討させて頂いている状況ですが、様々な点からみても今後はもっと広がると思われます。また、当社のグループ企業内に製紙会社や紙加工業も多いため、今後特長のある段ボールパレットを使うだけでなく、販売することも検討していきたいと考えています。
5.おわりに
今回段ボールパレットについてご説明と当社においての情報をお話ししました。
上記にも述べさせて頂いた通り当社は製紙メーカーと段ボール原料に関わる関連企業との接点もあり、今回情報収集と同時に今後の展望や課題を聞いた感触では、今後も段ボールパレットは伸び続けるであろうと見込まれているようでした。
大判ロール紙や設計製図用紙の輸送という裏方的な存在とはなりますが、段ボールパレットはまだまだ日々進化していきそうですので、また新たな情報が入った場合はご紹介させて頂きます。
執筆者紹介
高谷 陽介(Takatani Yosuke)
1992年桜井株式会社に入社。販売推進・商品開発・営業部でクリーンぺーパーを含んだ機能性材料・産業材を中心に取り扱ってきた経験を基に現在マーケティンググループに所属。プライベートでは50歳半ばで体力の衰えを止めたいと考えている。