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話題の新素材!紙パルプから作られるセルロースナノファイバーとは?

更新日:5月30日


紙は木の繊維分を取り出して細かくしたパルプから作られますが、このパルプを現在の技術で更に極小にするとどうなるか?ナノレベルまで細かくすると、セルロースナノファイバー(CNF)を呼ばれる素材になります


このセルロースナノファイバー、植物由来で環境に優しい素材でありながら、鋼鉄の1/5の重さで5倍の強度があるなど、いくつかの特徴的な性質を持っています。

今回はこの夢の新素材について説明します。


---目次-------------------

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1.セルロースナノファイバー(CNF)はどんなもの?

植物由来の極小繊維物質の事です。主に木から作られます。

木の成分を大きく分けると、繊維分であるセルロースと樹脂分であるリグニンに分離されます。このうちの繊維分を細かくしたものがパルプと呼ばれ、紙の原料になります。(非木材のパルプもありますが大量生産の紙にはほとんど使われません。)

このパルプを更に細かくしたものがセルロースナノファイバーです。化学処理や機械処理をしてナノサイズまで小さくします。



2.セルロースナノファイバーはどのくらい小さいの?

セルロースナノファイバーといわれるのは、直径が3~100nm(ナノメートル)の繊維状物質です。3ナノ?といわれてもピンときませんよね。


例えば20mの木を1/1000に粉砕すると、20mmの木材チップになります。

この木材チップを更に1/1000にすると、20μmのパルプになります。

このパルプを更に1/1000に微細化したものがセルロースナノファイバーです。

1nmは10億分の1mで、分子の直径を表わす時に使うような単位です。

セルロースナノファイバーは毛髪の1/100~1/1000のサイズです。

(写真提供:日本製紙株式会社)



3.セルロースナノファイバーはどんな特長があるの?

木材繊維をナノレベルにほぐす事により、紙やパルプにない特徴を持つようになります

非常に軽く強い、熱に対する寸法安定性が高く、ガラス並みの熱伝導性、弾性率はアラミドと同等、ガスバリア性が高い、水分散液の特徴的な粘性(チキソトロピー性)などなど…。

しかも安全で環境に優しいバイオマス素材です。



4.セルロースナノファイバーは何に使われているの?

単体で使うのではなく、他の素材の性能を向上させる為に混ぜて使用します。


例えば、

・樹脂やゴムに混ぜると、強度や弾性率が上がる。【車、部品など】

・化粧品などに入れると、ジェル状なのに成分が肌にしっかり吸着する。【化粧品など】

・ボールペンインクに混ぜると筆記性がよくなる。【ボールペンなど】

・おむつシートに金属イオンを付着して使用すると消臭力が上がる。【おむつなど】

・スポーツシューズのクッション材に使用すると軽量化できる。【スポーツシューズなど】

・パンやどら焼きの皮に入れると、ふっくら、しっとり仕上がる。【パン、どら焼きなど】


…食品にも使用されるとは驚きです!



5.おわりに

様々な特徴を持つ、植物由来でカーボンニュートラルな新素材セルロースナノファイバーですが、コストや技術的課題もあり、本格的に普及するにはまだまだたくさんのハードルがあるようです。


しかし、基礎研究が始まってまだ20年程度、工業生産ができるようになってわずか数年です。セルロースナノファイバーの親戚のような素材である、カーボンナノファイバーも、航空機に使用されるまでには工業生産されたから40年以上かかったそうですので、産学官が連携した技術開発、用途開発はこれからです。


日本が世界をリードするセルロースナノファイバー。

「技術大国日本」復活への貢献が期待される夢の新素材です



執筆者紹介

 

小嶋 圭(kojima kei)

1992年桜井株式会社に入社。

WEB分野及び新商品開発分野のリーダーとして部を牽引。

趣味はバス釣りで、生涯釣果1000匹を突破に喜ぶ。(※ただし大小は問わず。。。)

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