皆様は「ドラフター」という器具をご存じでしょうか?
長らく設計に携わっている方であれば必ずやお聞きになったことがあるであろう、設計には欠かせない器具ですが、近年一般的にはほぼ耳にすることはないかと思われます。
今回はドラフター及び弊社製品との関係について説明していきます。
---目次-------------------
1.ドラフターとは?
2.当時の時代背景
3.現在への流れ
5.おわりに
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1.ドラフターとは?
ドラフターとは手書き用の製図器具で、製図板上にT定規、勾配定規、縮尺定規などの製図道具の機能を集約したアームがついている製図台のことです。
言葉で表現してもご存じでない方はイメージが湧かないと思いますので、下の画像をご覧ください。
「あー、これか!」と思われた方、映画やドラマの設計事務所やデザイン事務所のシーンで見かけたことがあるかも知れません。現在稼働率は低いものの、事務所の隅に置いてあるというお客様もいらっしゃると思います。
CAD(Computer Aided Design)と呼ばれる現在のプロッター(大型プリンター)出力が普及するまでは当然図面は手書きで行われていました。その作業を支えたのがドラフターです。ドラフターの利用で平行線や垂直線、斜線を正確かつ効率的に描くことができました。
尚、ドラフターという名称は、武藤工業株式会社の製品名(登録商標)ですが、武藤工業品が広く普及・浸透したことによりそのまま一般名称のような扱いで使われています。
ジーンズやセロハンテープ、ナイロンと同じ感覚ですね。他の呼び方をしようとすると、ドラフティングマシン、手書き製図用補助器具などになるでしょうか。「ドラフター」以外で表すのが困難なくらいです。
2.当時の時代背景
ドラフターの歴史は古く、その原型は18世紀にフランスで発明されたと言われています。
当初は木製で時代と共に金属製へと進化していきました。日本での全盛期は高度成長期の1960年から1980年にかけて製図需要が高まった時で、海外製の輸入だけでなく国内メーカー品も製造販売されていました。国産のドラフターは精度が良く操作性も良いことからあっという間に日本国内において海外製のシェアを上回ったようです。
ドラフター、ドラフティング(図面を作成する行為)というワードは、昭和はもちろん平成に入ってからも設計製図業界では当然のように飛び交っていました。実は弊社でも設計製図に携わる事業部門を「ドラフティング事業部」と呼んでいた時期があります。
3.現在への流れ
1990年代からコンピュータの技術革新と共にCADの普及が進み、その圧倒的な効率性で2000年代にはドラフターの市場は完全にCADの市場へと変わっていきました。その勢いは留まることなく現在へ至ります。
ほんの数年前ですが、弊社の販売店様の営業担当で、20代半ばの方がいらっしゃいました。既に製図用紙関連商品を販売頂いて2~3年経っていましたが、ある日「ドラフターって何ですか?」と打合せで口にされた時に「ああ、もうそういう時代なんだな」と強い衝撃を受けた事を今でも覚えています。
4.桜井株式会社製品との関わり
弊社ではドラフター全盛期から今現在も製図用紙、製図用フィルムを開発販売しています。CADプロッターもペンプロッターからLED方式、インクジェットへと進化を続けて来たので製図用の紙・フィルムも合わせて変化してきました。
加えて言えばドラフターへのセットはカット判サイズですが、プロッター向けはロールタイプがメインとなるので、現在販売量では必然的にロールタイプが主力となっています。
5.おわりに
高性能なCADソフトやプロッターがいまだ進化を続けている中で、現在もドラフターは一部で使用されています。
その理由は「現場ですぐに対応出来る」、「プロッター購入までには至らない」など各業界で様々ですが、「アイデアやイメージが手描きのほうが出せる」、「CADでは出せない風合いや精度が出せる場合がある」、などの理由の場合は、CADを完全に使いこなせていないだけのケースが多いのかもしれません。
ただドラフターを通じてのほうが職人や設計者の魂や温かみを感じるのは、私が旧い人間だからでしょうか。
執筆者紹介
高谷 陽介(Takatani Yosuke)
1992年桜井株式会社に入社。50歳オーバーでマーケティンググループに配属され、平成のビジネスしか知らない男が令和を生き抜くため日々Webマーケティングを勉強中。
趣味は昭和の代名詞であったゴルフとバイクに加え、中高年層に根強い人気があるポケモンGo。